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2016.03.04 Friday

日本のヴァイオリン製作の先駆者「鈴木政吉」

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     先日、東海テレビで鈴木ヴァイオリンの創業者・鈴木政吉氏を主人公のしたドラマ「日本のヴァイオリン王」
    が放映されました。それに前後して私も井上さつき著の「日本のヴァイオリン王・鈴木政吉の生涯と幻の名器」
    を読んでいました。  読後の感想と「鈴木ヴァイオリン」ついて記してみます。

    昨今の楽器業界とくにヴァイオリン業界では、「鈴木ヴァイオリン」の評価は芳しくないのを、まず知っておく
    必要があります。現代の状況だけをクローズアップすれば、ドラマ仕立てにはならなかったと思います。それで
    も創業者の鈴木政吉氏を丹念に調べる研究者がいたので、過去の彼の人生がこうしてテレビドラマになったので
    しょう。

    実際、政吉氏は道なき道を手探りで歩んだパイオニアでした。そのことは賞賛に値するのは事実です。スゴイこ
    となのです。日本になかった楽器・ヴァイオリンを三味線職人が独学でものにしていく様は、驚き以外なにもの
    でもありません。時は江戸から明治時代に変わった頃ですよ。情報なんてものは存在しない時代のことですから
    そこから生まれたヴァイオリンは、正に血の出る努力の賜物でしょう。

    そのヴァイオリンが欧州の万国博覧会等で賞を受賞していきます。多少は未開国のお手並み拝見みたいな高飛車
    な気分で賞を出している感じを受けましたが、真実は解りません。同時に政吉は海外で精力的に本物を吸収して
    いったと思われます。このあたりの器用さは日本人ならではと感じます。


    この本で知ったことで一番驚いたことは、日本のヴィオリン需要の最盛期は、大正時代にあったということです。
    ヴァイオリンが身近な楽器であった時代があったのです。庶民の伴奏楽器に使われていたのですが、これはアメ
    リカ合衆国の西部開拓時にフィドルが流行ったのと同じじゃないかと私は推測しています。というのは、庶民は
    ホンキートンクな演奏で充分楽しめるからです。ヴァイオリンには絶対音階が必要という感覚は、クラシック演
    奏が蓄音機の普及とともに日本に浸透しはじめてから起こってきます。

    また第一次世界大戦でヴァイオリンの輸出が急速に伸びています。これは欧州の産地が戦争に巻き込まれたり、
    産地からの輸出が困難になって、日本の鈴木ヴァイオリンに受注が殺到したからです。
    需要の拡大によって、ヴァイオリン生産が手工芸から工業生産へと移行して行きます。政吉の名が後世に残った
    のは実業家としての成功にあるともいえます。多くの職工を雇い大量生産・低価格を実現させたのです。作り方
    もシステム化したと思います。

    私は鈴木ヴァイオリン関連会社の生産に関係していますが、実よくにシステムマチックにできていると感心して
    います。もちろん現在は木工専用機の導入がどのメーカーでも当たり前ですが、政吉は手工と機械加工を大正時
    代に確立させていたのです。そういう意味でも、現在ある国内のメーカー先駆けとして、もっと尊敬の念を持た
    れてしかるべきだと思います。

    さて、大正期にピークを迎えた鈴木ヴァイオリンは、その後急速に業績を悪化させて行きます。輸出も減り、国
    内需要も激減します。それは第二次世界大戦・太平洋戦争のためとも言えますが、戦後会社としての「鈴木ヴァ
    イオリン」は減速して行き、一方政吉と同時期にオルガン製造で成功を収めた山葉(ヤマハ)寅楠の「日本楽器」
    が隆盛して行きます。このあたり、2社の差はいったいなんなのか・・・・
    (また当初から、大阪の三木楽器が鈴木と山葉をいち早く扱っていたのも面白い事実)

    政吉はヴァイオリンほかマンドリン、ギターなどの生産にも道をつけています。また新しい楽器(マンドレーラ)
    を発明したりもしています。私がもっとも興味を持つのは、政吉が考案した「済韻(さいいん)」と呼ばれるヴァ
    イオリンの鳴りをよくする「秘法」です。政吉の研究の成果とされるこの「済韻(さいいん)」が、どのような
    方法でどんな響きをするのか。興味津々なのです。弾き込みを促進する技術・機械の導入らしいのですが・・・

    テレビドラマでは、政吉に2人の妻が出てくるところが話題になりしましたが、そんなことよりヴァイオリン製
    造という一大事業を成し遂げた男の、波乱に満ちた一生が人の感動を呼ぶ事実(ドラマ)であったことがすばら
    しいと思います。

    「忘れさられていた偉人」鈴木政吉。今後、楽器業界は彼をどう位置づけていくかは、残った「鈴木ヴァイオリン」
    本体に掛かっているかも知れませんね。

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    ギター工房9notes/勝田進

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