<< 第10話 | main | 第12話 >>
2012.09.30 Sunday

第11話

0


    あれは30代前半、すでに田舎に引っ越してはいたものの、街へは時々訪れていました。


    名古屋市の伏見。この街は画廊や美術館があり繁華街の栄からすぐなので若いときからよく訪れていました。


    20代は現代美術を扱うギャラリー巡りをしていましたが、(伝説の桜画廊があった)30代はそれより骨董屋に興味が移っていました。


    そう。通りに面したウインドウに飾ってある「白磁の壺」が目的です。


    明るくない室内からうっすらと浮かび上がる白い肌。腰はどっしりと太く、肩はまるく内から膨らんだシルエット。コウダイは見えるか見えないかぎりぎりの線。あぁ、それを見たさに何度も店の前を行ったり来たり。


    朝鮮半島を統一した「季氏朝鮮」時代に花開いた白磁のやきものは、そのおおらかな姿と時として凛としたたたずまいを併せ持つ「焼き物」として古くから日本人をも魅了して来ました。


    店主の私もずっとぞっこんで、いつかは所有したい品ですが、なんせ本物はお高い。よって店頭でウインドウショッピングするのが、せいぜいです。


    利休以前「お茶」の世界に村田 珠光が現れて「侘び茶」を確立していきます。そこにおいて李氏朝鮮前期のお茶碗が珍重されはじめます。


    井戸・粉引(こひき)・堅手(かたで) 味わい深い景色が「侘び茶」に合いますね。


    ところで店主が朝鮮半島のやきものに興味を持ったのは、珠光や利休のお茶の世界からではなく、民藝運動の指導者 柳宗悦からです。仕事柄 木工品から入っていきましたが、徐々にやきものにもこころ惹かれていきます。中でも「壺」のバリエーションは多く、いろいろ楽しめます。


    その「いろいろ」なやきものを大正時代に朝鮮に渡り住み込んで、研究した日本人の兄弟がいました。


    浅川伯教(のりたか)・巧(たくみ) 兄弟です。彼等がいなかったら、「いろいろ」な朝鮮半島の美を我々は知らなかったかも知れません。


    民藝の柳に逢う「手土産」に「染付秋草面取壺」を持参しました。そこから始まったといっても過言でない、と思います。その美しさに惹かれた柳は、すぐさま「李氏朝鮮」時代の「やきもの」の紹介に取り組みます。


    10話に書いた富元憲吉も濱田庄治も河合寛二郎もその影響下といえるでしょう。浅川兄弟の遺産は珠光・利休以後のもっとも大きな事件ではないかと推測します。


    朝鮮半島の「白」は中国の「白」とは違います。ルーツは中国ですが、中国の「白磁」は完璧な「白」で、汚れ・しみ・傷などまったくない完璧で完全な対照形の「白い磁器」です。


    それに対し朝鮮半島の「白磁」は少々の汚れ・しみもあり形のひずみもあります。その完璧でない「白」とひずみのある「形」が日本人が好んだのは「なぜなのか」いろんな説があるでしょうが、店主もこの「白」と「形」が好きです。


    「ほっと」するんですね。


    空間がほのかに温かみを帯びて安堵感が生まれます。
    だから手にいれたくなるです。


    数はいりません。数点の「李朝」の白い壺を店内に置いて季節の野草を投げ入れ、架空楽器店「サン・クリストバル・デ・ラス・カサス」を温かい場所にしたいですね。

    ------------------------------------------------------------------------------------------

    ギター工房9notesホームページへどうぞ

    コメント
    コメントする








     
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック
    Calendar
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031   
    << July 2019 >>
    Selected Entries
    Categories
    Archives
    Recommend
    Links
    Profile
    Search this site.
    Others
    Mobile
    qrcode
    Powered by
    30days Album
    無料ブログ作成サービス JUGEM