2018.07.27 Friday

無限界集落

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    江戸時代まで、日本の山間地を自由に住み渡る部族がいたそうな。

    マタギしかり、木地師しかり、修験道者しかり・・・

     

     

    20XX年、日本政府は「標高700メートル以上の地に人が住むことを禁止する」と発表。

     

    日本国民の人口が減りつつある中、地方での80歳以上の年齢が増え続け、若者層が仕事を求め

    都市部に流入するのに歯止めが効かない現状において、

    政府は都市部に人口を集め、郡部の人口が少ない市町村を廃止する政策に打って出た。

     

    人口減、企業の海外流出、国内需要の伸び悩みで税収が落ちて行く中、

    インフラや地方行政等を効率的に行うため資本投下を都市部に限ろうとするものだ。

     

    そのため日本地図の700メートルの標高線に沿って「壁」を作ることになった。

    その中に住んでいた者は、強制的に近くの都市に移住させられる。

     

    これから、700メートル以上のインフラ整備は一切行わない。田畑・建物・私有林などは放置すること。

    定期的にドローンなどで壁の中に住む違反者がいないか捜査をし、違反者がいた場合は厳しく罰する、と

    お達しが出ている。

     

     

    これで「限界集落」がなくなると政府は言うのだ。

     

     

     

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    2018.07.12 Thursday

    プールに落ちた蝉

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      脳天から蝉の声が落ちて来る。

      じりじりと頭から音がするのを感じながら、一人 通学路を歩いて帰る。

      暑さとダルさで家までなんと遠くに感じることか。

       

      境内を通り、橋を渡るとそこから家まで木陰はない。

      目の前の”打ち水”が自分との距離間を保ちながら後ずさりしているよ。

      ゆらゆらしてるのは自分の意識か空間か。

       

      夏休みのプール開放日後に選抜選手の練習がある。

      2学期になると市の競泳の選手権があって、その選手に選ばれたのだ。

      でも、いやなんだよ。

      プールで自由に泳ぐのは好きだけど、大会で泳ぐのはいやなんだ。

      そんなに早く泳げる選手じゃない。

       

       

      スターターピストルがいつ鳴るのだろう。飛び込み台の上で足が震える。

      心臓の鼓動が耳元で聞こえるようだ。

       

      ダブーン!!!

      水面を胸で捉え泡に包まれる。

      手も足も水の縄につながれたみたいに重く泳いでいるのか もがいているのか。

      プールの端が黒く霞んで見える。

       

      息継ぎしても空気が入ってこない。苦しい、酸欠だよ。

      観衆の声が途切れ途切れに聞こえる。(これは断末魔か?)

      じゅるる、じゅるると水泡が列を作り顔をこする。

      音にだけは敏感になっている。

       

      隣のレーンの選手のバタ足がスローモーションのようだ。

      懸命に手足を動かして前に進んでいるつもりだが、ちっとも壁が見えないよ。

       

      ターン!

      キックしたまましばらく休む。

      後25メートルの辛抱だ。汗をかかないがノドが乾く。

      バタ足は水面にしぶきが出てはいけないのだろ。それでは効率が悪いと教わった。

      水を押し出すように足を動かすんだ。(と頭では考えている)

       

      観衆の声援は、ラストの選手がゴールまで着くまで終わらない。

      これが済めば、僕の短くも長い夏も終わるだろう。

      ミーン・ミーン・・・

       

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      2018.06.13 Wednesday

      透り抜ける男

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        強い陽光が教室を白色化させている。

        国語の答案用紙も真っ白だ。

        なんで質問者は、作者でもないのに言葉の意味を断定できるのだろう。

        もし私が作家になったら、自分の文章をテストには使わせないぞ。

         

        静かな時間が過ぎて行く。

        解らない問題を解くのは、時間の無駄だ。

        解る問題だけが答えられる。記入できる。

         

        どの教室の生徒も西向きの黒板の方角に向かって着席している。

        みんなが同じ方向を向いている。

        ならば、背後から近づいて来る人間には気が付かないだろうな。

         

        私は席の一番後ろに座っているから、

        ここから黒板方向へ走って行けば、私の正面を見ることはできないはずだ。

        皆、私の後ろ姿だけを追う。

         

        だが、黒板にぶつかってしまう。

        ならば、黒板を透り抜けたらどうだ?

        『壁抜けの術』を使うのだ。

         

        そして5組から1組まで走り抜ける。

        一気に走り抜ける。

        2組の順子ちゃんも見てくれるかな。

         

        だがひとつ問題がある。

        ここは3階ということだ。1組の壁を抜けるとどうなる?

         

         

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        2018.05.31 Thursday

        新同盟国

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          一斉にフラッシュがたかれた。

          小泉大治郎首相と習遠平国家主席が硬く握手を交わし、抱擁した。

          両者とも幾分高揚した顔つきだ。

           

          日本国と中華人民共和国が同盟国の調印をした。

          先月、日本は米国との同盟国協定を破棄したのだった。

           

          日本は米国の”核の傘”から離れ、中国の”核の傘”の下に入ることを選んだ。

          ここ数年、米国の凋落は激しく経済力の衰えも目を覆うばかりだった。

          日本車の米国内のシェアは8番目になり、一方 中国内では日本車の需要はうなぎのぼりである。

           

          太平洋で繰り広げられる米中の軍事駆け引きは、中国の押しばかりが目立っている。

          日本の米国基地も士気が落ち荒れるのに手を焼き、小泉大治郎首相は

          米国へ軍の撤退を迫った。

           

          そして、日本はついに中国を手を組んだのだ。

          これで、世界一の経済力を誇る中国内で、ますます自動車が売れるだろう。

          電気自動車の開発の遅れもその隙に挽回できるプランだ。

           

          ”昨日の敵は今日の友”これが生き残る必須条件なのだ。

           

           

           

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          2018.05.04 Friday

          春の自転車

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            不安に追い討ちを掛けるような雨天。

            いやだなぁ。学校に行きたくないなぁ。

             

            中学に進級して自転車通学になった。けっこう通学路にはアップダウンがあるから

            学校に着くころにはへとへとになってしまう。でも見知らぬ顔の前では

            そんな姿を見せられないから、眉毛に力を入れる。

             

            合羽を羽織って自転車をこぐのは苦手。なんだか自分の手足でないみたいだ。

            雨音がフードを通してパチパチ聞こえる。雨粒が合羽の表面ではじけて細かい水粒となる。

             

            4月は案外雨の日が多い。真新しい自転車と真新しい合羽と兄貴のお古の学ラン、そして

            真新しいヘルメット。雨合羽の中でそれらの匂いが混じる。ゴムの匂いが強いかな。

             

            でも、こうして合羽に身を包んでいると守られているような気にもなる。

            自分の呼吸音が聞こえる。自動車の近づく音がフィルターが掛かったようにエフェクトしている。

             

            行きたくない学校だが、鎧を来て行けば過ごせるかも知れないと

            合羽を着ててそう思う。戦国武将の鎧が欲しい。

             

             

            あいつは雨の中、傘も差さずに歩いて来た。

            これから授業だっていうのに、ずぶぬれだ。

            ヤツは切れ者。

            鎧以外、刀も必要だ。

             

             

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            2015.02.25 Wednesday

            裸の王様

            0

              俺はこの会社の社長だ。

              俺がこの会社の憲法だ。

              俺が全てを裁く。俺の気に入らないことはすべてアウト。

              俺の好きなようにやる。当たり前だ。

              気に入らないヤツは首にする。

              文句あっか?俺はこの会社の社長だ。偉いんだ。

              俺に意見するって?

              いい根性じゃないか。覚悟はできてるんだな?

              えっ?

              俺が般若心経を毎朝唱えているって知ってる?

              なんのこっちゃ?関係ないだろ?

              えっ?

              大乗仏教は「救済」を目的にしてるって?

              そっ、そんなの当たり前だ。知ってるに決まってるだろおぅ〜・・

              えっ?

              全ての人に仏性があるって?

              そっ、そうなんだ。そうだろう・・・

              悪人だって救われる可能性はあるんだって?

              そっ、そりゃ〜 そ、そうだな・・・・

              ・・・・・・



              「般若心経」はただの呪文じゃないです。意味があります。



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              2015.02.13 Friday

              Untitlde ♯03

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                幕間にお手洗いに行った。

                靴紐が緩んだので出口にしゃがみこんで紐を結び直していたら、
                そこに「初めて『好きです』と告白した子」が
                歩いて来た。

                全身黒い服を着ていたが喪服ではなかった。

                「こんにちは。お懐かしい」
                と彼女は言った。

                こんなところで逢うとは思わなかったので、驚いたが、
                本当に懐かしかったので、ついまじまじと彼女の顔を見てしまった。

                シワがある。自分と同じような年齢だ。

                よく考えると彼女の顔を良く覚えていないのだが、それでも彼女だと解る。

                彼女の視線は私ではなく背後に注がれていた。振り返ると旦那が用を足して出てきたところだった。
                ぼさぼさの髪の毛。赤い顔。太い眉。

                いそいそと席に戻ると、靴の紐がまだ緩んでいる。
                靴下が靴の中に引っ張り込まれていたので、靴を履き直そうと靴を脱いだら
                昔、彼女にもらった靴下を履いていた。

                靴下には穴が開いていた。




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                2014.03.11 Tuesday

                Untitled ♯02

                0

                  妻と娘が思わず手を口で覆った。


                  「おめでとうございます。ご主人は日本国のために命を投げ出す御覚悟。まことに尊いことです。」
                  市役所の職員は、赤い封筒を妻に手渡した。


                  職員が玄関戸を閉めると、二人は声を上げて泣いた。


                  赤い封筒の中身は解っている。
                  与党が多数決で国会で成立させた「原子力発電所事故現場に強制的に召集できる法」の、私への「召集令状」だ。


                  被爆者続出で危機的な原子力発電所に人を送り込むために政府・与党が成立させたのだ。


                  悪化するばかりの原発事故現場。高い濃度の放射能が次々と作業員を被爆させ、もう一般募集では人が集まらなくなったのだ。


                  50歳代を狙い撃ちのしたのは、人口比率の高い高齢者や団塊の世代は、与党の票田なので手をつけないようにし、また若い人も国の将来性を考え避けたと思われる。


                  働き盛りのピークを過ぎた我々が、強制的に前線へと追いやられるのだ。


                  すでにもう何陣も送り込まれている。その多くが病院に収容されているという噂だが、無事退院したという話はひとつも聞かない。


                  赤紙を無視して逃げる手もある。ただし捕まるともっとも放射能レベルが高い現場に送られる。
                  数分で致死量を超える被爆であろう。


                  もっとも、屍の山を乗り越えてあのメルトダウンを誰かが止めないと、この国はだれも住めないところになる。
                  それどころか、北半球がダメになるのも時間の問題だろう。


                  行くしかないのである。

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                  ギター工房9notes HPへどうぞ(恵那) homeで「つぶやき」やってます。

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                  2013.10.20 Sunday

                  Untitled ♯01

                  0

                     男が夜な夜なミシンを踏んでいる。
                     

                    日中は発掘現場で働き、午後5時の定時ですぐ帰宅用意し、ラッシュ時間の駅に飛び込む。
                    乗り継ぎ駅をいくつか経由し、1時間半かけてアパートのある駅に降り立つ。
                    駅前の弁当屋で一番安い「かき揚げ」を二つ買って部屋に帰る。
                    その「かき揚げ」を「てんつゆ」でさっと煮込んで玉を流し込み、天丼をつくる。
                    まぁまぁ旨いし、安上がりだからな、それ以上を望んじゃいけない。
                    そしてミシンに向かう。
                    リバース装置付きのカセットデッキに「ブルーハーツ」のカセットを入れ、音楽に酔いながらミシンを踏む。
                    天丼とともに焼酎の炭酸割りを飲んだから、いっそう音楽に酔う。ロックに酔う。ブルーハーツに酔う。
                     

                    あぁ、もう寝なくっちゃ、明日の仕事に障るな。
                    炎天下での発掘作業は、しんどいんだぜ。
                    と独り言を言って男は熱い風呂に入り寝る。
                    贅沢にも内風呂つきのアパートなんだ。
                     

                    月曜日から金曜日、週末も一目散に帰宅しミシンを踏む。
                    赤い布をひたすら繋ぎ、何を作ろうとしているのだ?
                    土曜も日曜もミシンを踏む。
                    その間、洗濯と掃除もした。意外ときれい好きのようだ。
                     

                    この街の週末には、魅力的なライブが目白押しだ。
                    行きたいライブやお誘いもある。
                    しかし、男はミシン仕事を今月末までに仕上げないといけないのだ。
                     

                    来月には、男の「個展」が開かれることになっている。
                    一週間レンタルの画廊で、男の個展が開かれるのだ。
                    DMもつくり、友人・知人の郵送した。
                    どうぞお越しください、と書かれているらしい。
                     

                    この街には友人・知人も少ないが、男はこの街で個展を開くことにした。
                    だれが見に来てくれるか、皆目見当もつかないが、やるしかないのだ。
                    男はなにもかも捨ててミシンを踏んだのだ。
                    だが服を作って訳じゃない。
                    モード・ファッションが男の土俵ではない。
                     

                    男の土俵は、「現代美術」。
                    コンテンポラリー美術・現在進行形美術だと言う。
                     

                    そんなもん観る人がいるのか?
                    関心ある人がいるのか?
                    それをやってなにかいいことでもあるのか?
                    それで収入を得ることができるのか?
                    収入をえられない仕事なんて、趣味だろ?と言うヤツもいる。
                     

                    それでも男は開催日に向けてミシンを踏む。
                     

                    オープンニングに顔を出してやって下さい。
                    入場料は画廊では取りません。無料で見られて批評もできるのです。
                    そこで、男が何を成し遂げ、何を犠牲にしているか見てやってください。
                     

                    お願いします。

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                    ギター工房9notes HPへどうぞ(恵那) homeで「つぶやき」やってます。


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